弁護士がスムーズに開業するためのポイント

 

弁護士が独立するとき、どうすればもっともスムーズに開業までこぎつけることができるのでしょうか?
独立の際にはオフィス選びやレイアウトの考案、内装、事務員募集、挨拶状の用意などが必要で、最近では士業でもホームページが必須となってきています。
今回は、弁護士がスムーズに開業するためのポイントを解説していきます。

1.独立開業するまでの流れ

独立を考えてから実際に開業するまでの流れは、以下のようになります。

(1)勤務先に独立の意思を伝える
 ↓

(2)独立の時期を相談して決める
 ↓
(3)資金の借り入れを検討する
 

(4)オフィス探し
 

(5)オフィスのレイアウト、内装を決定する
 

(6)リース契約をする
 ↓

(7)事務員を探す、雇用する
 ↓

(8)挨拶状を準備する
 

(9)ホームページを開設する
 

(10)開業

 

以下でそれぞれのステップについて、詳しくみていきましょう。

2.勤務先に独立の意思を伝える

現在どこかの法律事務所に勤務している場合、独立するなら必ず事前に勤務先に独立の意思を伝える必要があります。突然アソシエイトがいなくなると、今の雇用主弁護士に迷惑をかけるので、早めに伝えましょう。


「独立したい」と言ったときに許してもらえないことは少ないですが、ボスによってはそういうこともありますし「もうちょっと待ってくれ」などと引き延ばされるケースもあります。そういった場合、よく話し合い、強い決意を示してボスを納得させましょう。どうしても納得してもらえない場合、好ましいことではありませんが、喧嘩別れになってしまう例もあります。

3.独立の時期や引継方法をボスと相談して決める

独立の許可をもらったら、退職時期や今の事務所の事件引継方法などを相談して決めましょう。


独立後も今の事務所の事件を手伝う場合、報酬をどのようにするのかなども話し合っておく必要があります。

4.開業場所を検討する

弁護士が独立するとき、「どこで開業するか」が重要です。たとえば勤務は東京でしていても、「独立は地元で」という弁護士も多いです。


東京は弁護士がたくさんいて競争が激しいので、地方の方が営業をやりやすかったりのんびり仕事ができたりなするメリットがあります。
自分にどちらが向いているか、検討しましょう。

5.借入を検討する

事務所を開業するとき、どのくらいお金をかけるかが問題です。


人によっては300万円で済むケースもありますが、1000万円以上かける人も珍しくはありません。もしも手元に資金がなければ借入を検討する必要があります。


借入先として検討できるのは、銀行や公庫などの金融機関、それと弁護士会の協同組合です。たとえば東京弁護士会の場合、無担保融資は5年間、それ以外は 20 年以内、融資金額最大1億円、金利2~4%で事業ローンを利用できます。

6.オフィス探し

次にオフィスを探す必要があります。いったん事務所を定めたら、簡単に移転できるものではないので慎重に選びましょう。


オフィス選びのポイントは、以下のような点です。

6-1.駅からのアクセスが良い

弁護士事務所には、依頼者に通ってきてもらわないといけないので、駅からのアクセスの良い場所に開設すると優位です。

ただし地方で車社会の場合には、車で通いやすい場所であることの方が重要です。

6-2.裁判所や弁護士会に近い

裁判所や弁護士会には1日に何度も行かないといけないことも多いので、なるべく近いことが望ましいです。

6-3.十分な広さがある

依頼者との打ち合わせスペース、執務スペース、事務員のスペース、本や記録を置くスペースなどが必要ですから、それらをおける十分な広さのあるオフィスを選びましょう。

6-4.周辺環境について

弁護士事務所ですから、あまり周囲が雑然とした場所にあると印象はよくありません。できればビジネス街や他にも法律事務所が多く集まっている場所などにした方が良いでしょう。

7.オフィスレイアウト、内装を決める

次にレイアウトを決めます。受付、打ち合わせスペース、弁護士の執務スペース、記録や本を置く場所、事務員の執務スペース、それと将来アソシエイトを入れたときの執務スペースくらいは作っておきましょう。

内装は、内装業者と相談して素材や色、設置場所などを決めていきましょう。

8.リース契約をする

法律事務所を開業するときには、さまざまな物品のリースが必要です。複合機、プリンター、電話、主装置、パソコンなどです。

これらについてもどういった機種を導入するか検討して契約しましょう。

9.事務員を探す

事務員を探す方法はいくつかあります。
経験者を採用したければ、弁護士会の事務員募集情報を見てみましょう。

これまで事務員経験のある人の情報が多数掲載されているので、気に入った人と面接をして採用できます。


先輩の弁護士や友人の弁護士に紹介してもらったり、今の勤務先の事務員に来てもらったりすることも可能です。


未経験者で良ければ自分でアルバイトやパートを雇用するのも1つの方法ですし、派遣社員を使う方法もあります。

10.挨拶状を準備する

開業したら、すぐに弁護士会の会員全員に挨拶状を送らないといけないので準備しましょう。


文章を考えて事務所をお披露目する日を決め、印刷する用紙(色や素材など)を決めて発注します。

11.ホームぺージを開設する

これからの時代、弁護士であってもホームページは必須です。ホームページメインで集客しなくても、ホームページがないとクライアントからの信用を勝ち取れないケースもあります。


そこで得意分野を強調し、事務所の雰囲気や強みを伝えられるウェブサイトを作りましょう。事務所の取り扱い分野や雰囲気とホームページが合っていないと効果的でないので、HP業者としっかり相談しながらコンテンツを決定します。

12.営業開始

ここまでできたらようやく営業開始です。

挨拶状を送り、事務所のお披露目会を行って、以前の事務所の引き継ぎをしつつ新たな事件をこなしていきましょう。

13.導入しておくべきツールなど


事務所を開業するなら、以下のようなツールは必須です。

・判例検索ソフト
・会計ソフト
・チャットワーク、Gmail、LINE、iPadなどのツール

弁護士でも新しいツールは躊躇せずどんどん取り入れていくことが望ましいです。

14.経費を抑えるための工夫

事務所を開業するとき、なるべく経費を抑えたいなら、以下のような工夫ができます。

14-1.電話代行会社の検討

電話代行会社とは、事務所にかかってきた電話を代わりに取ってくれて、要件を伺って契約者に転送してくれるサービスです。転送の方法はメールやFAXなどで、料金は月数千円程度です。


独立したてでそれほど事務作業もないのであれば、事務員を雇わずに電話代行会社を使い、不在時の電話だけを転送してもらうようにすれば、固定経費を大きく抑えられます。

14-2.レンタルオフィス、シェアオフィスの検討

自分だけの独立したオフィスを借りると、保証金も内装費用も相当高額になってしまいます。


オフィス代を節約するなら、レンタルオフィスやシェアオフィスの利用を検討してみましょう。


これらは両方とも、1つの施設を複数の事業主が共用するタイプのオフィスです。ただレンタルオフィスの場合、一部自分専用のスペースが設けられています。

ミーティングルームなどは共用です。

机や椅子などの備品も当初から備わっているので、自分で用意する必要はありません。

シェアオフィスの場合もほとんど同じですが、自分専用のスペースがなくすべての空間が共用となります。


これらのオフィスであれば一般の貸事務所より格安で借りられるので、資金が少ない人は検討してみましょう。

14-3.自宅開業の検討

当初さほど忙しくないのであれば、自宅開業も1つの方法です。
事務所を借りずに自宅で登録して、打ち合わせなどは必要に応じて喫茶店などで行います。


ただ自宅開業をすると、弁護士会のホームページなどに自宅の住所が載ってしまいますし、自社サイトの住所やアクセスにも自宅情報を載せないといけなくなるので、少々リスクが高くなります。


今の時代、レンタルオフィスなどを利用できるのですから、できればそちらを検討した方が良いでしょう。

まとめ

弁護士の独立では、近年さまざまなツールの出現によって選択肢が多様化しています。また早期に独立する方も増えてハードルが下がっています。


独立を検討されている方は、上記参考にしながら自分に合った方法で開業を進めてください。

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この記事を書いた人:元弁護士 福谷陽子

京都大学法学部 在学中に司法試験に合格
勤務弁護士を経て独立、法律事務所を経営する
約10年の弁護士キャリアの後にライターに転身
現在は法律ジャンルを中心に、さまざまなメディアやサイトで積極的に執筆業を行っている

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