法律事務所が今後取るべきコンテンツ戦略とLLMO対策・AIO対策

対話型生成AIチャットボットの普及とGoogleのAI Overview(旧SGE)の導入は、ホームページコンテンツの在り方に対する構造的転換と情報取得行動のパラダイムシフトを引き起こしています。
特に検索結果画面に表示されるAI Overviewは、ユーザーのクリック行動に直接影響を与えており、従来のSEO施策へのインパクトは非常に大きくなっています。
なかでも、知りたい情報を調べる「Knowクエリ」のような検索意図が明確なクエリでは、AI Overviewが表示される傾向が強く、これらの領域ではSEOへの影響が顕著です。
サイト訪問者数の最大化をKPIとして設定し、検索の過程で自事務所(法律事務所)を認知してもらい、相談獲得につなげてきた事務所にとっては、特に注意が必要です。
受電数には変化がないものの、ホームページの閲覧数が減少していると感じている方も多いのではないでしょうか。実際、当社クライアントの事例を見ても、AI Overviewの影響を踏まえると、現時点でセッション数が約10%減少していても不思議ではありません。
なお、2024年時点のガートナー社の調査でも、AIチャットボットやその他の仮想エージェントの登場により、2026年までに検索エンジンの利用ボリュームが25%減少すると予測されています。
「Knowクエリ」流入減少の背景
Knowクエリ流入減少の理由としてはGoogleのAI Overviewと対話型生成AIチャットボットの普及が進んだことですが、今のところ対話型生成AIチャットボットは、検索エンジンの代替ではなく補完的な役割のほうが大きく、直接的なSEOへの影響はまだ小さいです。
多くのユーザーは依然としてGoogle検索を利用しており、検索エンジン経由の流入が主流ですので、検索画面での戦いという側面でGoogleのAI Overviewの影響のほうが大きいと言えます。
Knowクエリ流入減少の背景についてまとめます。
(1)検索エンジン側の変化
GoogleのAI Overview (旧SGE)が検索画面上に直接回答を表示し、その解答にユーザーが満足してしまい、従来よりサイトへのクリック率が低下し、いわゆるゼロクリック検索が増加しました。
(2)対話型生成AIチャットボットの普及
「〜とは」「〜の意味」「~について知りたい」といった調べ物系(Knowクエリ)はChatGPT、Gemini、Copilot,、Perplexityなどの対話型生成AIチャットボットを利用するケースが急増。対話型生成AIチャットボットの精度が上がったことにより、検索エンジンを経由せずにユーザーが疑問を解決できるようになった。
「DOクエリ」「GOクエリ」強化の必要性
このようなKnowクエリでのサイト訪問者数減少という流れの中で、考えておきたいのは生成AIで完結しづらい領域についての意識です。「申し込みたい」「比較したい」「問い合わせたい」「法律事務所に行きたい」といった「DOクエリ」「GOクエリ」(行動系クエリ)は、ユーザーが最終的に行動を起こす必要があるため、公式サイトやサービス提供者への遷移が必須です。また、「DOクエリ」「GOクエリ」はコンバージョンに直結するため、契約・相談といった法律事務所のビジネスの成果につながるため、流入数が減ってもROIは高くなるので、当然ここを考えてサイト運営をしていたはずですが、コンテンツ構成を全て「DOクエリ」「GOクエリ」にするということは不可能であり、そもそも「DOクエリ」「GOクエリ」でサイト訪問した方にも「~について知りたい」というコンテンツがないとユーザーを満足させることは難しいでしょう。
今後強く意識していただきたいのは、「~について知りたい」というコンテンツの中に1ブロック「DOクエリ」「GOクエリ」を追加することです。毎回触れることへの違和感を覚える方もいるかもしれませんが、その記事のテーマについて弁護士に相談するメリット、タイミング、相談申し込みの方法を記載することは重要です。生成AIは一般的な情報は答えられるが、各事務所・企業独自の強みや具体的な申込動線は提示できない。そのため、実際の「相談行動」フェーズをしっかり設計したコンテンツは検索でも残りやすいです。
検索クエリの種類についてまとめ
| クエリ例 | クエリタイプ | 意図 | 
|---|---|---|
| 法律相談とは | KNOW | 情報を知りたい(定義・概要) | 
| 法律事務所 渋谷 | GO | 特定の場所に行きたい | 
| 弁護士 無料相談 | DO | サービスを利用したい | 
| 法律書籍 おすすめ | BUY | 商品を購入したい | 
LLMO・AIOとの兼ね合いで今後作成するコンテンツを考える
ここまでは、「守り」について解説いたしましたが、“ゲームチェンジ”は「チャンス」と捉えられることもできますので、「攻め」について解説いたします。
従来からのメタ情報、クローラビリティ、サイト内リンク、外部リンクなどSEO対策は必須である前提として、LLMO( ChatGPTなどの大規模言語モデル対策)とAIO(生成AIだけでなく、音声アシスタントや要約AIなど、広範なAI対策)について考えていきます。LLMO、AIOは自事務所のサイトが生成AIによる回答の引用元として使われることを目的とします。
LLMO対策とAIO対策
- AIが引用しやすいように、明確な見出し(H1、H2、H3)で区別をして、各セクションのブロックだけを抜き出しても分かる文章構成とする。
- 文章自体も分かりやすく簡潔になるよう心掛け正確な語句を使用する。
- Q&Aやul・liタグ形式・テーブルを随所に用いる。
- 回答に当たる部分は、一言の簡単な回答にする。回答の補足が必要な場合は一言の簡単な回答を示した後に、補足の回答をする。
- 結論を含む文章は太字やマーカーなどで視覚的に目立たせる。
- 運営法律事務所名、弁護士名を正確に示す。
- 構造化データ(スキーママークアップ)を用いる
- 事務所独自の情報 = 一次情報(解決実績、お客様の声、インタビュー形式のページ等)を掲載する。
- E-E-A-T(経験、専門性、権威性、信頼性)を意識する。
E-E-A-TはGoogleが重要視する品質で、近年SEO対策でも重要度が増しているため、AI引用率を高めるためにも重要な指針となります。
E-E-A-Tに関する詳しい説明はこちらのページを参照ください。
まとめ
上記にまとめたように、対話型生成AIチャットボットの普及とGoogleのAI Overviewの導入という転換期において、今までのコンテンツ方針に必要とされるアレンジとLLMO対策とAIO対策を意識した対応が一定程度は必要です。
そんな中でも、法律事務所のホームページ運用のコンテンツ方針において最重要なのは「弁護士がその専門性と経験に裏付けられた知識で提供しているコンテンツは検索エンジンであれ、生成AIであれ評価される可能性が高い」という認識に基づいて、Googleの評価基準であるE-E-A-Tを守ったコンテンツ提供を続けていけば、生成AIともうまく付き合っていけるはずです。
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