【データで読み解く】増加する弁護士数と独立開業の実態とは

日本の法曹界は1999年に「司法制度改革審議会」が内閣に設置されたことを皮切りに、「法科大学院制度の創設」や「司法試験制度の改革」、そして「弁護士人口の大幅増員」という大きな変化を遂げてきました。一般市民には「裁判員制度」の導入が身近な改革でしょう。

かつて弁護士は少数精鋭であると思われてきましたが、司法制度改革によって多くの弁護士が社会に輩出されるようになり、全国型の法律事務所も多数登場しています。

司法制度改革は国民が法的サービスにアクセスしやすくすることも目標の1つでしたが、残念なことに司法過疎の地域は今も残されています。

そこで、本記事では日本弁護士連合会が発表する最新の統計データを基に、現在の弁護士数や独立開業の実態について、司法過疎にも触れながら詳しく解説します。

司法制度改革とは|弁護士数はどのように変化したか

司法制度改革とは、1999年から本格的に開始された日本国内における司法制度の大きな転換を意味します。今では多くの方々に利用されている法テラスも本改革によるものであり、法科大学院(ロースクール)の設置や、新司法試験の導入などもあわせて進められてきました。このような試みの背景には、法曹(弁護士・裁判官・検察官)人口の増加を目標に掲げてきたことなどが挙げられます。

司法制度改革で弁護士の数が増加

司法制度改革によって、弁護士数は司法制度改革が始まった1999年当初よりも大幅に増加しています。日本弁護士連合会の最新データである「2024年版弁護士白書」にて発表された2023年度の新規登録弁護士数と比較すると、以下の結果となっています。

  • 2023年(第76期)新規弁護士登録数 996人(うち、女性254人)
  • 1999年(第51期)新規弁護士登録数 549人(うち、女性132人)

一方で、弁護士登録数がこの20年以上にわたって増加の一途だったかというと、実はそうではありません。司法制度改革以降、第60期にあたる2007年には新規弁護士登録数は2,043人に上りましたが、実は減少傾向にもあるのです。

期別
(終了年度)
終了者数
(人)
裁判官
(人)
検察官
(人)
弁護士
(人)
その他
(人)
第41期(1989年)47058513601
第50期(1998年)72693735537
第60期(2007年)2,3761181132,043102
第70期(2017年)1,56365671,075356
第76期(2023年)1,3918176993241

出典:弁護士白書 2024年版 司法修習終了者の進路別人数より抜粋

このような数字の変化の背景には、弁護士の供給過多によって就職難が起きたことや、法律事務所以外の活躍の場が広がっていることも挙げられます。
参考URL 弁護士白書 2024年版 司法修習終了者の進路別人数

司法修習終了者の進路別人数

では、法曹への入り口となる司法修習終了者の進路別人数とはどのような変化を辿っているのでしょうか。こちらも上記参考の弁護士白書2024年版 司法修習終了者の進路別人数を参考にすると、第76期は1,391名の終了者のうち、裁判官81人、検察官76人、そしてその他の進路が241人となっています。

つまり、241人もの終了者が法曹以外の道へと進んでいるのです。

このような数字の背景には、弁護士の需要は法律事務所や裁判所・検察庁だけではなく、コンサルティング分野や税務分野にも増えていることが挙げられます。また、さまざまなトラブル直面しやすい官公庁へ就職するケースもあります。

将来の弁護士人口はどうなる?

司法制度改革により増加したものの、弁護士登録数は一時よりも減少していることから、司法制度改革は新たな岐路に立たされています。

弁護士白書2024年版では、将来の弁護士全体の人口について以下の予想数字を発表しています。

  • 2026年には弁護士人口が46,840人になると予測
  • 2026年以降も年間1,500人の司法試験合格者が弁護士となることを前提とした場合、

弁護士人口は2046年に63,804人でピークを迎える

  • その後は減少傾向に転じ、2061年以降は約56,954人まで減少する見込み

この予測では、司法制度改革によって始まった弁護士増加の流れが、今後も一定の規模で継続しつつ、将来的には弁護士数全体の低下の流れにあることを示しています。
参考URL 弁護士白書 2024年版 弁護士人口の将来予測

1人経営の事務所はどうなる?法律事務所の開業数のゆくえ

法律事務所にはさまざまな規模があり、600人以上を有する大規模事務所もあれば、1人で営んでいる法律事務所もあります。以前は弁護士に登録すると「イソ弁(居候弁護士の略)」と呼ばれる働き方が広く浸透しており、修行期間のように働いた後に独立・開業をする傾向がありました。

しかし、全国チェーン型の法律事務所の登場や、企業内弁護士(インハウスローヤー)の人気も高まりなどから、独立・開業以外の選択肢も広まっています。では、法律事務所の開業数は今後どのようになると考えられるでしょうか。

1人法律事務所の数から読み解く開業数の今後

2024年版の弁護士白書では、事務所の規模別にみた事務所数の推移を公表しています。
この統計は1人事務所の変遷もわかるものです。以下20人以下の事務所数を抜粋します。

2022年
(全体:18,128)
2023年
(全体:18,276)
2024年
(全体:18,470)
1人11,16911,29911,436
2人3,1783,1593,176
3~5人2,6302,6322,651
6~10人777798808
11~20人248261263

この統計では、直近の3年以内は1人事務所が法律事務所数の6割であり、大人数の弁護士が所属するほど少なくなっています。日本では過半数を超える法律事務所が1人で経営されているものであり、独立・開業は安定した数字で推移している様子もうかがえます。

出典:弁護士白書 2024年版 法律事務所の共同化及び弁護士法人の現状より抜粋

弁護士歴何年で独立開業が一般的?

では、実際に弁護士が独立・開業に至るのは、弁護士歴何年が一般的でしょうか。

少し前の資料であり、直近の数字とは異なる可能性がありますが、2018年に日本弁護士連合会が実施した「近年の弁護士の実勢について(弁護士実勢調査と事件動向調査を元に)」を参考にすると、弁護士歴が5年以上の半数以上が独立していることがうかがえます。10年以上で75%以上、30年~35年未満のベテラン勢は93.7%が独立して働いており、経験年数を積み重ねていくにつれて独立・開業する流れです。

経営者弁護士勤務弁護士
5年未満13.9%66.8%
5年以上~10年未満51.9%28.1%
10年以上~15年未満75.9%12.0%
15年以上~20年未満83.3%8.0%
20年以上~25年未満86.7%7.6%
25年以上~30年未満93.2%1.0%
30年以上~35年未満93.7%1.1%
35年以上86.7%2.0%

5年程度の修行期間の後は、独立の準備を始めることが多い様子がわかります。ただし、割合は少ないですが即独と呼ばれる、弁護士登録後すぐに独立する弁護士も一定数存在しています。

事務所に所属する弁護士であっても、ノキ弁として働き続けたり、パートナーなどのポジションに昇格したりするためには難易度の高い事件や事件数を多くこなし、収益を上げる弁護士である必要があります。

弁護士数の増加と独立・開業のバランスはどうあるべきか

弁護士数自体は増加していても、働き方には多様性も見られる時代を迎えています。弁護士業界には過払い金を含む債務整理のようなトレンドがあった時代もありますが、過払い訴訟の減少によって弁護士が扱う事件は細分化しつつあります。

企業法務に特化している法律事務所もあれば、離婚や相続といった個人の家事事件に集中する法律事務所もあり、独立・開業についてはどのように集客し、収益を確保していくかは大きな課題と言えるでしょう。

司法過疎と司法制度には課題が残る

2025年5月8日の読売新聞では、2024年11月末までの1年間の新規登録が0人か1人だけの弁護士会が全国に52のうち、16にも上ることが報道されました。日本では東京に3つある弁護士会に登録が集中する状況が続いていますが、この背景には都市部と地方の所得格差や、一部の法科大学院が廃止している影響があると考えられます。

司法制度改革は司法過疎にも光を当てるものでしたが、再び地方格差が大きな課題となっており、司法過疎と司法制度には今も課題がある状況です。このような事情から、国選弁護業務や法テラスの民事法律扶助による弁護士費用の見直しの声は大きくなっており、弁護士業界全体の見直しは今後加速していく可能性があるでしょう。

参考URL 讀賣新聞オンライン 新人弁護士が地方で不足、全国16会で「0人か1人」…所得格差や法科大学院の廃止影響 2025-05-08配信(2025-05-25確認)

まとめ

本記事では日本弁護士連合会が発表する最新の統計データを基に、現在の弁護士数や独立開業の実態について詳しく解説しました。

弁護士の働き方には多様性が生まれているものの、一定の経験を積んだのちに独立・開業する流れは今もなお継続しています。弁護士が独立する際には、集客・収益の2つの課題について検討する必要があります。

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